海抜2518mの高さを誇るタラナキ山はニュージーランドで最も完璧な円錐形をした火山です。タラナキ山はおよそ12万年かかって今日の姿になりました。最後に噴火したのは1775年で、火山学者はこの山を「死火山」ではなく「休火山」だと見なしています。
マオリ伝説では、タラナキ山が孤高にそびえている理由を魅力的に説明しています。マオリ伝説によるとタラナキはかつてはトンガリロ、ルアペフ、ナウルホエなどの中央台地にある他の火山と一緒に暮していました。ところがある時、タラナキがみんなが美しい丘とあこがれるピハンガを誘惑しようと近づいたので、トンガリロがやきもちを焼いて噴火してしまいました。トンガリロの怒りを恐れたタラナキは大地を削りながら西へ逃げ、その跡が現在のファンガヌイ川になったといわれています。
長い年月を経て形成された、雪を頂くタラナキ山は、その美しさで多くの旅行者を魅了してきました。ファンタムズ・ピークと呼ばれる小さなくぼみを除けば、この山は左右対称の美しい姿をしています。タラナキ山は「ニュージーランドで最も多くの人々が登山する山」とも言われ、アマチュアの登山者にとっても登頂しやすい山です。映画『ラストサムライ』の背景にも使われ、その名を広く知られるようになりました。
植物に興味があるなら、エグモント国立公園はたいへんおもしろい場所です。海岸の浜辺から山頂にかけて、上へ登れば登るほど周囲の景観は変化し、植生が変わっていく様子を観察することができます。低地の森ではたくさんのリムやラタの木をはじめ、カマヒ、トタラ、カイカワカなどが見られます。山の中腹斜面にある、「ゴブリン・フォレスト(悪鬼の森)」と呼ばれる鬱蒼とした森は、曲がりくねった奇妙な形の木々と帯状に伸びる厚い不気味なコケがあることから名づけられました。その森より上に登れば、亜高山性低木林や高山植物を見ることができます。たくさんの登山・ハイキングコース(opens in new window)があるので、国立公園内は歩いて楽しむのがおすすめです。
国立公園内には登山コースとうまくつながった環境保全省が管理する8つのハイカー用のハット(山小屋)(opens in new window)があります。また、環境保護省ではドーソン・フォールズにある「コニニ・ロッジ」と北エグモントにある歴史ある「キャンプハウス」という2つのハイカー用ロッジを管理しています。国立公園内には、宿泊を提供している「ドーソン・フォールズ・マウンテン・ロッジ」と「マウンテン・ハウス・モーターロッジ」という2つの個人所有のロッジもあります。
ストラットフォード、オプナケ、ハウェラの町には手頃な値段のモーテルやホテルがあります。よりデラックスな宿泊施設を探すなら、ニュー・プリマス市内で見つけることができます。
13もの入り口があるエグモント国立公園は、ニュージーランドで最も原生の自然にアクセスしやすい場所といえるでしょう。多様なハイキング/トレッキングコースがあるのも特徴のひとつです。「アラウンド・ザ・マウンテン・サーキット(タラナキ山周回コース)」は踏破するのに3日から5日かかります。「ポウアカイ・サーキット(ポウアカイ周回コース)」は北エグモントから始まり、アフカワカワ沼地と旧ポウアカイ火山跡を横切って北エグモントに戻る所要2日のコースです。また、ドーソン・フォールズや東エグモント周辺には様々な短い散策用のコースがあります。北エグモントからゴブリン・フォレストを通っていく「カマヒ・ウォーク」もその中のコースのひとつです。ぜひ、試しに歩いてみてください。
山頂を目指す主な登山道の出発地は北エグモントで、往復6時間から8時間かかると見ておく必要があります。厳しい環境下となる冬期の登山は、雪山や氷の張った山の登山経験者だけに限られています。タラナキ山を登山する人は、山独特の雪や氷の状態を熟知しているだけでなく、高度な経験があり、適切な装備とその使用方法を知っている必要があります。タラナキ山の所有がタラナキ部族のものであることを証明するために、タフランギという人物がタラナキ山に登り、山頂に火を灯したのが、初登頂だといわれています。
タラナキ山の東斜面にあるスキー場はストラットフォード・マウンテン・クラブによって運営されています。スキーシーズンは6月から8月で、クラブ会員だけでなく一般のスキー客も利用できます。